2022.12.01
電子契約とは?契約の種類や導入のメリット・デメリットをご紹介

世界的にIT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む現代、各種文書を電子化する動きが活発になってきています。
契約書や請求書、申込書といったビジネス上の文書も例外ではありませんが、「そもそも電子契約とはどのような契約なのか」「法的に有効なのか」といった疑問や不安を感じる方もいるかもしれません。まずは電子契約の基礎知識やサービスの選び方などをしっかりと確認したうえで、導入すべきかどうかを判断することが大切です。
今回は電子契約の概要と法的な証拠力について解説しながら、電子契約を導入するメリット・デメリットやサービス選びのポイントをまとめました。さらには、手間やコストを抑えつつ法的効力の高い契約を行える電子契約サービス「AgreeLedger(アグリーレジャー)」の魅力についても併せてご紹介します。
電子契約とは

「電子契約」とは、インターネット等の情報通信技術を活用して契約する方法のことです。電子ファイルに対して電子署名やタイムスタンプといった電子データを記録し、契約した証拠を残します。
電子契約の普及率
電子契約に馴染みのない企業においては、「紙面契約のほうがスタンダードだから…」と導入を躊躇している場合もあるかもしれません。しかし、昨今のコロナ禍によってテレワークが加速化するなか、電子契約の普及率は急激に上昇しています。
実際、2022年1月に一般財団法人日本情報経済社会推進協会と株式会社アイ・ティ・アールが共同で実施した『企業IT利活用動向調査2022』において、国内企業982社のうち電子契約を利用している企業は69.7%との結果が示されました。利用を準備・検討している企業も合わせると84.3%に上り、電子契約サービスの普及率が大きく向上していることがうかがえます。
参照:「コロナ禍の長期化に伴い、企業の72.7%がテレワークを実施 電子契約の利用企業は69.7%に拡大」|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
この背景には、長引くコロナ禍のもとで「感染症対策として出社する人数や日数を抑え、テレワークで業務を完結させたい」といったニーズがあります。また、毎年のように自然災害が発生し、巨大地震の可能性もささやかれている日本でのビジネスにおいて、紛失や破損のリスクを回避できる各種文書の電子化は非常に有用と認識されている印象です。
書面契約との違い
このように近年において急速にニーズが高まりつつある電子契約ですが、書面による契約とはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴について以下の表で押さえておきましょう。
書面契約 | 電子契約 | ||
---|---|---|---|
形式 | 紙 | 電子データ | |
契約書の作成方法 | 紙に印刷 | PDFファイルなど | |
証拠力 | 署名方法 | 署名または記名捺印 | 電子署名(当事者型または立会人型) |
本人性の担保 | 印鑑証明書 | 電子証明書など | |
完全性の担保 | 契印・割印 | タイムスタンプ | |
事務処理 | 契約書の送付方法 | 郵送または持参 | インターネット通信 |
保管方法 | 書棚や倉庫など | サーバーなど | |
必要コスト | 作成費(印刷代や印鑑購入費、人件費など) 収入印紙代 郵送費 保管料 など |
サービス導入時の初期費用 サービスの利用料金 など |
最大の違いとしては、電子契約の場合は電子データを使用し、書面契約の場合は紙を用いて契約することです。そのため、書面契約における署名や記名捺印は電子契約においては不要で、その代わり電子的な証明機能が使われます。
また、電子契約はインターネット上で完結し、締結までのプロセスも含めていつでもどこでも閲覧できることから、書面契約のように対面や郵送の作業を行う必要がないことも大きな特徴です。
電子契約の具体的なメリット・デメリットや電子契約特有の用語と仕組みについては、本記事の中でさらに詳しく解説していきます。
電子契約の2つの種類

電子契約には、契約する当事者同士が電子署名を行う「当事者型」と、電子契約サービスの事業者が電子署名を行う「立会人型」の2種類があります。
具体的にどのような違いがあるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
当事者型
当事者型では、本人確認の手段として「電子証明書」を利用します。
契約当事者本人が法律の要件を満たす認証局が発行した電子証明書を用い電子署名を行うと、実印同様の証拠力が担保されます。ただし、電子証明書の発行に際しては住民票の写しの提出や、写真付きの公的証明書などの提示が必要となるため、証明書の取得や更新管理などに手間と費用がかかるうえ、電子署名には有効期限がある点にも注意が必要です。
立会人型
立会人型は、メール認証とシステムログを利用して本人確認を行うタイプの電子契約です。
自分で電子証明書を取得する必要がなく、メールアドレスさえ所有していれば利用できるため、導入しやすいことが大きな魅力です。ただし、その証拠力や信頼性は利用する電子契約サービス事業者のシステムに依存することとなります。また事業者のサービス終了リスクを考慮する必要があり「当事者型」と比較すると電子契約データの証拠力が劣る傾向があります。
電子契約の種類についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
電子契約の「当事者型」と「立会人型」の違いとは?それぞれの特徴を比較
電子契約に関わる法律

電子契約の法的有効性に関わる法律
電子契約の導入をこれから検討される方は、電子契約が紙の契約と同じように法的効力が認められるかどうか、不安に感じるかもしれません。以下で電子契約にも法的有効性が認められるのか、法的観点からみていきましょう。
まず民法では「契約自由の原則」が謳われており、契約締結の形式については、何ら制限されていません。
法律上、契約は当事者の一方が申込み、それに対して、相手方が承諾の意思を表示した段階で成立します。このように、「契約書」や「契約データ」を作成しなくとも契約は成立するので、電子契約の場合でも契約自体は問題なく成立するのです。契約書や契約データを作成する目的は、後日、双方の間で契約内容の認識に齟齬が発生しないようにするためです。契約書は「契約した証拠」であり、契約の有効性の要件ではありません。
(契約の成立と方式)
民法第522条
1.契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2.契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
契約締結の申込と承諾の意思表示方法は、法律上、その形式は定められておらず、口頭の合意によっても、電子的方法による合意であっても成立します。但し、契約の法的効力が認められるためには、当該契約を締結する権限を持つ本人による合意である必要があります。そのため、企業間で電子契約を締結する場合、合意の証拠となる署名や捺印が、契約締結権限を持つ人により行われたかの確認が重要になってきます。
電子契約の証拠力に関わる法律
紙の契約と電子契約は、締結の形式が違うだけで、契約書の内容が当事者に対して法的効力を有する点はどちらも変わりません。電子契約では、電子署名法という法律により、法の要件を満たす電子署名を行うことで、紙の契約書における実印と同様の証拠力も与えられます。当事者型は、端的に電子署名法に則り契約書の証拠力を担保する電子契約の方法です。
一方で、”立会人型”タイプの電子契約サービスも広く使われていますが、政府見解によるとこちらも電子署名法の要件を満たしうるものであると考えられています。
電子署名法3条
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
電子契約法3条は、一定の要件を満たす電子署名がある場合にその電子データが「真正に成立した」と推定する規定です。すなわち要件を満たす電子署名があれば、その電子データは「本人が作成したもの」と推定されるのです。この規定は紙の文書における民事訴訟法228条の「二段の推定」を電子データに置き換えるものです。このように本人作成と推定される効力を「推定効」といいます。
つまり電子署名法3条の要件を満たせば、その電子データには極めて強い証拠力が与えられるのです。
当事者型の電子署名はもちろんのこと、立会型の電子証明でも「2要素認証」などの手続きを経れば推定効が認められます。
以上をまとめると、電子契約であってもきちんと要件を整えれば紙の契約書と同様の証拠力が認められるといって良いでしょう。
電子契約締結の際の留意点
法人間の契約が法的効力を発揮するには、双方が有効な契約締結権限に基づいて署名・捺印をする必要があります。権限のない人が勝手に署名押印をしても契約書は無効です。したがって、契約締結前に相手方の押印者、または署名者の権限を確認しておくことが大切であり、このことは紙の契約書であれ、電子契約であれ同じです。仮に確認作業を怠った場合は、契約の法的効力が無効になるなどトラブルに見舞われることがあります。特に、電子契約の場合は、電子署名者の氏名しか明らかにならないため、ことさら署名者が権限に基づいて契約締結したかどうかの確認が重要になります。
電子契約と法律に関するまとめ
ここまで見てきた通り、契約締結権限のある本人が電子署名法条の要件を満たす電子署名をしていれば、電子契約で締結した契約でも法的効力を有します。しかし相手方の契約締結権限をあらかじめ確認していなかった場合、相手方の「本人による署名ではなかった」「署名者が契約締結の権限を有していなかった」などの主張により、契約の法的効力を巡る訴訟を提起されるなどのトラブルにつながる可能性があります。このようなトラブルを起こさないために、本人による電子署名であることを確実に証明でき、かつ事前に相手方の契約締結権限を確認できる電子契約サービスを選ぶことが重要です。
電子契約を導入する5つのメリット

続いては、電子契約を導入する主なメリットを5つご紹介します。
1.契約コストの削減
電子契約における最大の魅力といえるのが、契約コストを抑えられることです。たとえば書類の印刷代や収入印紙代、郵送費のほか、署名や記名捺印などにかかる消耗品の代金および人件費、契約書の保管料など、書面契約の際に発生するさまざまなコストを削減できます。
2.契約業務の効率化や省力化
電子契約では、押印や製本、郵送などの作業が不要になるため、業務フローの効率化・省力化を実現できます。
3.コンプライアンスの強化と事業継続性の向上
書面契約では不注意による紛失をはじめ、自然災害や火災などによる消失のリスクが伴います。一方電子契約の場合、契約書を電子化し、クラウドなどに保管することで、そういった事態に陥る恐れがほとんどなく、管理面におけるコンプライアンスの強化に繋がります。
4.契約手続きの可視化
郵送での書面契約においては手続きがどこまで進んでいるのかがわかりづらいため、場合によっては「確か返送したはず…」などと不安に感じることもあるでしょう。電子契約では締結に向けたひとつひとつのプロセスが可視化されるため、手続きの進み具合を把握しやすくなります。
5.テレワークの実現
書面契約では文書の授受や決裁者の署名・捺印作業のために、出社したり顧客と対面したりする必要があります。電子契約においてはインターネットを介して確認や承認、契約の締結などを行えるため、在宅勤務を含むテレワークにて一連の業務を完結することが可能です。
電子契約を導入する4つの留意点

電子契約にはさまざまなメリットがある一方で、以下のような留意点も存在します。注意すべき点を事前にしっかりと把握したうえで導入を検討するとよいでしょう。
1.すべての文書に対応していない
2022年11月時点においては、国税関係帳簿や取引関係書類、決算関係書類、企業関係書類など、法令で保存が義務付けられている文書の大部分が電子化の対象となっています。しかし一部には電子化できない契約もあります。たとえば以下のような契約文書は、法律によって書面(公正証書)での契約が義務付けられています。
- ■ 事業用定期借地契約(借地借家法第23条)
- ■ 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約(企業担保法第3条)
- ■ 任意後見契約書(任意後見契約に関する法律第3条) など
なお、従来は宅地建物取引士の押印や書面による文書の交付が必要であった不動産関連の以下の書類については、2022年5月18日に施行された宅地建物取引業法施行規則の一部改正により、電子契約による手続きが認められました。
- ■ 媒介契約書
- ■ 重要事項説明書
- ■ 賃貸借契約書
- ■ 売買契約書
不動産以外の分野でも、多くの契約書において電子化を認める法整備が行われています。
2.業務フローの変更が必要
書面による文書から電子文書への転換においては、業務フローの変更が発生します。
既存のワークフローや契約書に記載されている文言などを整備する必要があるため、法務担当者の協力が欠かせません。また、「どの文書をどのタイミングで電子契約化するか」といった選定やスケジューリング、工程管理も重要です。
3.取引先の合意が必要
契約を電子化するためには、取引先企業にも契約の電子化に合意してもらう必要があります。たとえば立会人型の場合は取引先にも同じ電子契約サービスを利用してもらうケースが多いので、どちらも電子署名サービスを利用している場合には、どちらかに合わせなければなりません。当事者型の場合には公的書類の提出が必要となるなど手間とコストを要するため、合意を得られない可能性も高くなるでしょう。
先方の協力を得るためには導入のメリットなどを丁寧に説明し、電子契約に関する理解を得る必要があります。
4.契約締結権限の確認
先述したおり、契約締結権限の確認は電子契約においても重要です。電子契約サービスの中には、契約締結権限の確認についてはサービスの外で行う規約となっているものもあるので、電子契約サービスを選ぶ際、その点に留意することも必要です。
電子契約導入は目的に合わせて、取引先にとって使いやすいサービスを選ぶ

電子契約は大変便利なシステムですが、先述のような留意点も存在することから「自社に合うサービス」を吟味することが大切です。特に以下の点に注目して選ぶとよいでしょう。
- ■ 費用対効果
- ■ 目的との適合性
- ■ 証拠力の高さ
- ■ 安全性の高さ
- ■ 契約締結権限の確認がシステム内で可能か
また、電子契約を行うためには取引先にもシステムを導入してもらう必要があるため、取引先にとって使いやすいサービスを選ぶことも重要なポイントです。
電子契約サービスの選び方についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
自社に最適な電子契約システムを選ぶ10の比較ポイントをご紹介!
立会人型と当事者型の間を行く電子契約サービス「AgreeLedger(アグリーレジャー)」
もしも「立会人型では信頼性に不安があるし、当事者型は導入に手間がかかりそう…」などとサービス選びにお悩みの場合は、立会人型と当事者型の間を行く電子契約サービス「AgreeLedger(アグリーレジャー)」を利用されてはいかがでしょうか。
AgreeLedgerは立会人型ではあるものの、ブロックチェーン技術を用いることで契約の本人性や非改ざん性を担保し、契約データの証拠保全を電子契約サービス事業者依存から脱却させた、新しいコンセプトの電子契約サービスです。
また通常のID/パスワードの他、SMS認証、契約書の現物所有確認等、本人性を担保する証拠力を高めています。
大きな特長は「契約締結権限者の確認プロセスがサービスに組み込まれている」点です。このため取引先から委任状等の提示を受けなくても、契約締結の流れにおいて契約締結権限者が確認されるので、後々、契約締結権限がないことを理由にトラブルに発展する可能性を極力抑えることが出来ます。
手間とコストを抑えて安心して契約していただける点が大きな魅力です。
なお、最先端の電子契約サービス「AgreeLedger」についての詳細については以下にてご確認ください。
まとめ
電子契約を導入するとコストカットや業務の効率化、コンプライアンスの強化といったさまざまなメリットがあり、テレワークが加速化する昨今のニーズにマッチする大変便利な契約形態です。電子署名サービスを利用すればさほどの手間やコストもかかりません。
電子契約にはさまざまな手法があり「立会人型」と「当事者型」のどちらで契約を行うのか、どのようなサービスを導入するのかによっても使い勝手は異なります。ぜひ今回ご紹介した内容を参考に、自社の契約フローに適しているか法的有効性はもちろん、契約締結権限を確認できるかなどの特性を踏まえて電子契約サービスの導入を進めてみてください。