2023.01.12
電子契約の「当事者型」と「立会人型」の違いとは?それぞれの特徴を比較

電子契約を締結する際に利用する電子署名には「立会人型」と「当事者型」の2種類があります。
どちらを選ぶかにより、準備事項や手続きの流れなどが大きく変わってきます。
立会人型と当事者型の違いを知ると、単に知識が増えるだけではなく自社に合った電子契約サービスを選びやすくなるメリットが期待できます。
この記事では当事者型と立会人型の電子契約の違いについて、わかりやすく解説します。電子契約や電子署名について正しい理解ができるようになって適切なサービスを選びやすくなりますので、ぜひ参考にしてください。
電子契約の2つの種類「当事者型」と「立会人型」
電子契約の方法には「当事者型」と「立会人型」の2種類があります。それぞれがどういった方法なのかみてみましょう。
当事者型とは

当事者型とは、契約を締結しようとする本人が本人名義の電子署名を行う電子契約の方法です。当事者型の場合、当事者がそれぞれ自分で電子認証局へ申請して電子証明書を取得しなければなりません。
電子証明書の例としては、マイナンバーカードにおける「署名用電子証明書」が挙げられます。
当事者型の電子署名を行う際には当事者がそれぞれマイナンバーカードのときと同じように電子証明書取得の手続きを行う必要があり、手間と費用がかかります。
ただし電子証明書によって本人性が担保されるので、できあがった電子契約のデータは立会人型の電子契約データよりも、一般的に証拠力が高いと考えられています。
立会人型とは

立会人型の電子契約は、契約当事者である利用者の指示にもとづいて、電子契約のサービス事業者が、事業者自身の電子証明書で電子署名を行う方式です。契約当事者ではないサービス事業者(第三者)が契約の立会人のように介在するので立会人型とよばれます。
立会人型の電子署名は利用者本人のものではなく第三者である事業者のものですが、電子署名が「事業者の意思が介在する余地なく、利用者の意思のみに基づいて機械的に署名されたものであること」を立証することで、利用者本人の意思を示した署名であると認められる可能性があります。なお利用者の本人確認は、メール認証のみで完了とするサービスもありますので、その点も本人の意思を示す証拠として十分かどうか検討する必要があります。
当事者型のメリット・デメリット

次に当事者型電子契約のメリットとデメリットをお伝えします。
当事者型のメリット
なりすましのリスクが低く、立会人型より証拠力が強い
当事者型の何よりのメリットは、本人確認の過程が堅固なことです。
契約当事者がそれぞれ電子認証局で本人確認を行って電子証明書を用意する必要があるので、第三者が介在する余地がほとんどありません。電子証明書は本人が厳重に管理することにより、なりすましによって勝手に電子署名されてしまうリスクを大きく低減できます。また法的要件を満たした認証局の電子証明書を使うことによって「実印」に匹敵する程度の証拠力が認められ、立会人型よりいざというときの証明力が高くなるメリットもあります。この意味で、何かトラブルがあったときの証拠力(証明力)も当事者型の方が強くなる可能性があります。
当事者型のデメリット
本人名義の電子証明書を発行するコストと手間がかかる
当事者型の大きなデメリットは、手間やコストがかかることです。当事者が自分で電子証明書を取得しなければならないので、費用も時間も手間もかかってしまいます。電子証明書の有効期間はだいたい1~3年に設定されており、費用は法務省の発行するものであれば年間4,300円、民間会社が発行するものの場合には相場が年間10,000~15,000円程度です。
立会人型のようにメール認証と二要素認証だけで電子契約を締結、という訳には行きません。
契約相手も本人名義の電子証明書の発行が必要
当事者側の電子契約のデメリットの2つ目は、契約当事者が双方とも本人名義の電子証明書を取得しなければならないことです。相手が電子証明書の取得に消極的な場合、電子契約締結の手続きができません。
立会人型のメリット・デメリット

立会人型の電子契約のメリットとデメリットをみてみましょう。
立会人型のメリット
メールアドレスがあれば契約を締結できる
立会人型の1つ目のメリットは、メールアドレスさえあれば手軽に電子契約を締結できる点です。
電子契約のことがよくわからない、面倒な手続きはやりたくないといった方にとって電子契約のハードルが下がるでしょう。
本人名義の電子証明書の発行が不要で手間もコストがかからない
立会人型の電子契約の場合、本人が電子証明書を取得する必要がありません。
メール認証を受けて署名するだけなので、手間も時間もコストもかからないメリットがあります。
契約相手がユーザー登録しなくても締結できる
立会人型の電子契約の場合、相手がユーザー登録しなくてもメールアドレスさえわかれば利用できます。
契約相手が同じシステムを利用していなくても契約を締結できる点もメリットの1つといえるでしょう。
立会人型のデメリット
なりすましのリスクがある
メリットとして挙げた「契約相手がユーザー登録しなくても利用できる」というのは、考え方によってはデメリットとなります。
契約当事者が電子認証局で電子証明書の発行を受けるわけではなく、単にメール確認や二要素認証などで電子契約サービス事業者を通じて本人確認するだけだからです。当事者型と比べると、なりすましのリスクが比較的高くなるデメリットがあるといえるでしょう。
証拠力が当事者型よりも弱い
立会人型の電子契約データの場合、トラブルが生じた際などに期待される証拠力が当事者型より低くなる可能性があることが2つ目のデメリットといえます。当事者型であれば本人性が強く推定されるので、契約の成立が疑われたときにも真正な契約データであるとして契約があった事実を証明しやすくなりますが、立会人型の場合にはその機能が弱くなる可能性があるのです。
ただし立会人型でも電子契約は有効に成立しており、あくまで当事者型と比較した場合に証拠力が弱く評価される可能性がある、という意味にとどまります。
立会人型と当事者型の違いを比較
以下の表で、立会人型と当事者型の電子契約サービスを簡単に比較しましょう。
分類 | 比較項目 | 当事者型 | 立会人型 |
---|---|---|---|
導入面 | 電子証明書 | 必要 | 不要 |
契約相手の負担 | 大きい | 小さい | |
証拠力 | 完全性(改ざん防止) | タイムスタンプよって担保する | タイムスタンプによって担保する |
本人性 | ・本人が申請し、認証局が発行する電子証明書によって担保する ・何かあったときの証拠力は高い |
・電子署名のサービス提供事業者によるメール認証や二要素認証などによって担保する ・何かあったときの証拠力は比較的低くなる可能性がある(なりすましのリスクがある) |
|
証拠力 | 法的要件を満たした電子証明書を使う場合、最も高い | 当事者型と比較して低くなる可能性がある | |
特長 | メリット | 法的要件を満たす電子証明書を使った場合、電子署名法により真正な成立が推定される | 導入に際しての手間や費用、時間面でのコストが比較的少ない 契約の相手方に負担をかけない |
デメリット | ・契約当事者双方が電子証明書を発行しなければならずコストがかかる ・契約の相手方に負担をかける ・契約の相手方が電子証明書の取得に協力してくれないと利用できない |
・なりすましのリスクが比較的高くなる可能性がある ・トラブルが起こった際の証拠力が当事者型に比べて低くなる可能性がある |
【最新】立会人型と当事者型の利用状況
現在企業では、どの程度電子契約の導入が進んでいるのでしょうか?当事者型と立会人型のどちらの割合が高いのかも含めてデータから読み解きましょう。
一般社団法人 日本経済社会推進協会や株式会社アイ・ティ・アールの調査によると、2022年1月の時点でアンケート対象となった企業のうち69.7%が電子署名を利用しています。
当事者型の電子署名を利用している企業が26.0%ともっとも多く、次が立会人型の電子署名を利用しているケースで18.4%です。その次に「電子契約の導入・利用を検討中」の14.7%の企業が続きます。当事者型と立会人型のサービスを併用している企業も10%あります。
なお昨年(2021年1月)の時点ではもっとも多かったのが「電子契約の導入・利用を検討中」の17.7%の企業であり、次が立会人型の電子契約サービスを利用していた企業で17.5%、3番目が当事者型で14.4%でした。
この結果をみると、全体的に電子契約を導入する企業が増加しているといえます。特に伸びているのが当事者型の電子契約を利用する企業の割合です。おそらく、立会人型では本人確認などに不安があるため、証拠力を重視する企業が当事者型を採用しているのでしょう。
確かに一般的な立会人型の電子契約サービスでは本人確認の手続きが薄く、トラブルが生じた際の証拠力が弱くなる可能性があります。ただ電子契約サービスによっては堅固に本人確認を行い、証拠力を高める工夫をしているものもあります。
「電子契約の証拠力を重視したいけれども当事者型の電子証明書取得は面倒」という企業は本人確認プロセスを重視した電子契約サービスを選ぶと良いでしょう。
たとえばAgreeLedgerでは本人確認プロセスを重視しており、なりすましを防止するための高い機能を有しています。安全性を重視する企業はこういったサービスを利用するとメリットが大きくなるでしょう。
当事者型と立会人型を選ぶ基準

電子契約を導入する場合、当事者型と立会人型のどちらを選べば良いのか迷ってしまう企業が少なくありません。以下では選択の基準をお伝えします。
契約を厳格に結ぶ場合は「当事者型」がおすすめ
契約の内容や金額の多寡などによって電子契約サービスを選ぶ考え方があります。特に自社にとって重要な契約や金額が大きい契約の場合、万が一なりすましがあると大変な不利益が及ぶでしょう。導入のハードルが多少高くても、本人確認がしっかり行われる当事者型の方が安心といえます。
ただ立会人型であっても本人確認プロセスが重視されていて証拠力の高いものであれば、重要な契約であっても利用して問題ないものと考えられます。
同じ会社と繰り返し契約を結ぶことが多い場合は「立会人型」がおすすめ
これまで何度もやり取りしている取引相手の場合、一般的に、なりすましのリスクは低いと考えられるでしょう。当事者型の電子署名を求めると、契約相手に負担をかけてしまいます。
信頼できる企業や取引相手と電子契約を締結する場合には、利便性を優先させて立会人型を選択する考え方もあるでしょう。
どちらを使う場合でも、契約締結権限に関しての確認が必要
当事者型であっても立会人型であっても、署名者の「契約締結権限の確認」が非常に重要です。
契約締結権限とは、電子署名する人が本当に電子署名を行う権限を持っているか、ということです。
たとえば企業には何人もの社員が所属しており、社長の委任を受けてデータへ署名を行う権限を持った社員は限られています。権限を持たない社員が勝手に電子署名をしても、その電子データは真正なものとはいえません。将来トラブルが起こった際に有効な証拠とならない可能性があるのです。
電子証明書によって「本人による電子署名」であることを証明できたとしても、「電子署名した人」に契約締結権限がなければ、その電子契約は無効になってしまう可能性があります。
電子契約を締結する際には、「相手方(電子署名を行う社員)」が本当に相手企業内で契約締結権限をもつ社員なのか、確認する必要があります。
電子契約サービスは契約の内容やその重要性に合わせ選ぶことが大切
電子契約の当事者型、立会人型にはそれぞれにメリットとデメリットがあります。サービスを選ぶ際は契約の内容やその重要性を考慮してサービスを選ぶことが重要です。
この記事で紹介した両者の相違点なども確認し、自社のニーズや状況、契約内容に応じた方法を選択しましょう。
電子契約サービスの選び方はこちらの記事で詳しく紹介しています。
自社に最適な電子契約システムを選ぶ10の比較ポイントをご紹介!
従来の立会人型より真正性が高く、当事者型より楽に導入できる「AgreeLedger(アグリーレジャー)」
当事者型の電子契約は安全性が高い反面、手間がかかるデメリットがあります。一方立会人型の場合、手間はかかりませんが本人確認機能が弱いデメリットがあります。
この2つの良い点を組み合わせて弱点を克服したのが、電子契約サービス「AgreeLedger(アグリーレジャー)」です。AgreeLedgerは立会人型電子契約サービスであるものの、高い本人確認機能が担保されています。単にメール認証やタイムスタンプを付与するだけではなくブロックチェーンを利用して改ざんできないようにしています。また企業によってあらかじめ登録された人が電子署名を施すので、契約締結権限の確認プロセスもサービス内に内包しています。当事者型と違い、電子証明書を入手しなくて良いので当事者型のような手間やコストもかかりません。
より安全にかつ手間をかけずに電子契約を締結したい場合、ぜひAgreeLedgerの導入をご検討ください。
まとめ
この記事では電子契約の当事者型と立会人型の違い、それぞれのメリットやデメリットや選択基準をお伝えしました。電子契約サービスを選ぶときには自社ニーズや相手方企業の都合を考慮しましょう。
AgreeLedgerは本人確認機能が弱いという立会人型電子署名の弱点を克服した新しい電子契約サービスです。
これから電子契約を導入しようとするのであれば、AgreeLedgerを是非ご検討ください。