2023.05.08
電子契約に関する法律や法的効力、法改正情報をまとめて解説!

電子契約に関する法律には多種多様なものがあります。電子契約を締結しても、法律を知らなければトラブル予防やトラブルが起こった場合の解決などにつながりにくくなります。電子契約を有効活用するためにも法律の規定について知っておくことが必要です。
本稿では電子契約にまつわる法律について解説します。電子契約を締結しようとしている場合や導入を検討している場合、参考にしていただけますと幸いです。
電子契約とは

電子契約とは、電子データによって契約書に代わる証拠を作成する契約をいいます。従来は書面の「契約書」によって契約を証拠化するケースが多数でしたが、電子契約の場合には書面契約書は作成しません。代わりにPDFなどのデータを作成して証拠化します。メールやクラウドなどのオンライン上で電磁的にやり取りをするので「電子契約」といいます。
電子契約の概要について知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
電子契約とは?契約の種類や導入のメリット・デメリットをご紹介
電子契約の法的な効力

電子契約には法的効力が認められるのだろうか?
と疑問を持たれるケースがよくあります。
結論から申し上げると、電子契約にも書面契約書を作成する契約方式と同じだけの法的効力が認められます。
そもそも民法上、ほとんどの契約は口頭でも成立します(民法522条)。
(契約の成立と方式)
第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
契約は口頭で成立するので、その証拠となるものが電子契約であっても書面であっても法的効力としては変わりません。
ただし電子契約の場合、作成方式によって「証明力」が異なる可能性があります。証明力とは、トラブルになった場合などに契約内容を証明できる効力です。
電子契約で重要な証明力

電子契約を締結するとき、重要なのが、トラブルが発生したときの証明力です。
たとえば証明力が弱い証拠の場合、自分の言い分に正当性があることを証明しにくくなります。一方証明力が高い証拠があれば、正当性を証明しやすいので訴訟でも有利にはこびやすくなります。
電子契約の場合、電子署名法によって定義される「電子署名」がついていると、電子署名なしのデータより証明力が高くなります。
電子署名法3条の要件を満たす場合、さらに証明力の向上が期待できます。この場合、電子データが「真正」なものと推定されます。真正とは、契約の名義人がデータを作成したことです。つまり電子署名法3条の要件を満たすと、その電子契約データは署名人が真に作成されたものと推定されます。
なお電子契約サービスによっては3条の推定効が及ばないケースがあります。
電子契約に関連する法律

以下で電子契約に関連する法律をご紹介します。
民法
民法は、契約の基本について定める法律です。
たとえば「契約は基本的に口頭のみで成立する」と規定されており、契約を締結するのに契約書や契約データは基本的に不要です(民法522条)。ただし契約内容の証明のため、契約書を作成するのが一般的となっています。契約書がないと、トラブルが起こった際、解決の指標を示すことができなくなるためです。
また民法では売買や貸金、賃貸借などの基本的な典型契約についても定められています。さまざまな取引行為の根幹になる重要な法律といえます。
民事訴訟法
民事訴訟法は、民事裁判になったときの手続きについて定める法律です。
特に電子契約と関係するのは、民事訴訟法228条の「2段の推定」の規定となります。
2段の推定とは、文書に本人の署名または押印がある場合に、その文書が真正に成立したものと推定される効力です。
(文書の成立)
第228条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
つまり本人が署名または押印したことを立証すると、その文書は本人が作成したものと推定されます。
電子契約でも、電子署名法3条の要件を満たせば2段の推定と同じ効力が認められます。電子契約の証明力を考えるときに民事訴訟法228条4項類似の電子署名法3条の要件を満たすかどうかが非常に重要となります。
電子署名法
電子署名法には、電子署名の有効性や有効となるための要件、推定効(2段の推定と類似の効力)が及ぶための要件などが規定されています。
電子署名の場合、電子署名法3条の要件を満たすと、民事訴訟法228条4項の2段の推定と同じ効果が認められます。
第3条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
電子署名サービスには当事者型と立会人型の2種類がありますが、当事者型だけではなく立会人型であっても推定効が認められる可能性があります。
なお文書の真正な成立は、電子署名法の推定効が及ばないと証明できないわけではありません。電子署名法3条に準拠することは電子契約の必須条件ではないともいえます。
電子委任状法
電子委任状法は、他人に電子署名の権限を委任したことを証明する「電子委任状」について規定する法律です。電子委任状を発行する「電子委任状取扱業務」について規定されています。
たとえば代表者が他人に電子署名する権限を委任したときに、電子委任状が利用される場合があります。
電子契約法(電子消費者契約法)
電子契約法とは、電子商取引の契約基本ルールや消費者の救済措置を定めた法律です。「電子消費者契約法」ともよばれます。
たとえば消費者が操作ミスで、本来意図していなかった商品の注文やサービスの申込みをしてしまった場合、消費者は電子消費者契約法が定める錯誤無効の特例によって救済される余地があります(電子契約法3条)。
また電子契約の場合、書面の契約とは契約の成立時期が異なります。書面契約(民法の原則)の場合には申込みに対する承諾通知が発送されたときに契約が成立しますが、電子契約の場合には承諾通知が申込者へ「到達」したときに成立します。電子契約法にはこういった電子契約の基本ルールが定められています。
e-文書法
e-文書法とは、法律によって保存が義務付けられるさまざまな文書について、電子データで保存するときのルールを定める法律です。
e-文書法に従って電子データを保存する場合、以下の4つの要件を満たさねばなりません。
見読性
文書(データ)の内容を即座に読み取れる性質です。
完全性
電子データの滅失や毀損、改変、改ざんなどを未然に防ぎ、改ざんなどの有無が検証できる状態で保存されていなければならないとする性質です。
機密性
第三者によるアクセスや情報漏えい防止措置をとっていなければならないとするものです。
検索性
検索性とは、多くの情報の中から必要な情報を検索によって選別できなければならないとする性質です。
IT書面一括法
IT書面一括法は、法律が書面による契約締結や書面交付を求めていたさまざまなケースにおいて、相手方の承諾などを条件として,書面に代えて電子メールなどの電磁的方法を認める法律です。
多数の法律が一括して改正されたのでIT書面一括法とよばれます。
この法律が施行されたために、これまで書面での作成が必要だった場合にメールやFAXなどでも対応が可能となりました。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、税務関係の書類を電子的に保存するための要件をまとめた法律です。
税務関係の書類については、電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。
たとえば電子契約を締結した場合、契約データを単にPDFファイルとしてサーバーに保存するだけでは、電子帳簿保存法の要件を満たさない可能性が高くなります。民法や電子署名法上で有効なものとして取り扱えても、電子帳簿保存法上の要件を満たさなければ、税務調査の際にペナルティを受ける可能性があります。
税務リスクを回避するためにも、電子帳簿保存法を理解して同法の定める要件に従って契約データを保存すべきです。
印紙税法
印紙税法は、契約書や領収証などに貼付する印紙について定める法律です。
電子契約の場合、印紙税はかかりません。印紙税法の「課税文書」に該当しないためです。
電子契約を導入すると、印紙代節約の効力もあるといえます。
第3条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
電子契約と印紙について詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
電子契約で印紙代がいらない理由を国税庁の見解をもとに解説!
電子契約にまつわる法改正

電子契約に関しては、これまで多数の法律が改正されてきました。
たとえば建設業法が改正されて一定の要件を満たせば建築請負契約も電子データで作成できるように変更され、宅建業法の改正によって不動産の賃貸借契約や売買契約で電子契約を導入できるように変更されました。
特定商取引法により、クーリングオフ書面などについても要件を満たせば電子データを導入可能となっています。
さらに電子帳簿保存法における電子データ保存要件やスキャナ保存方法なども、改正されています。
電子契約に関しては頻繁に法改正が行われるので、法務担当者は常に最新の情報にアップデートしておく必要性があるといえます。
なおこちらの記事は2023年2月時点における情報をもとに記載しています。
電子契約を締結する際の法律面での注意点

電子契約を締結する際には、どのようなことに注意すれば良いのか、以下で重要なポイントをお伝えします。
契約締結権限を確認する
電子契約は電子署名によって行われます。電子署名した人に契約締結権限がなければ契約は基本的に無効です。たとえば会社の代表者が委任していないのに従業員が無断で社長名義の電子署名を施しても、契約データが有効にならないことは明らかです。
電子契約を締結する際には、相手が契約締結権限にもとづいて電子署名したのか確認する必要性が高いといえます。電子契約サービスを導入する際にも、契約締結権限を確認するフローが含まれているものを選ぶと高い安心感を得られます。
たとえばAgreeLedgerは契約締結権限の確認機能を内包しています。こういったサービスを選べば契約締結権限の確認作業についての不安が解消されやすくなります。
電子契約にまつわる法律の取り扱いを知ろう
電子契約を締結する際には、電子署名法上有効とされる「電子署名」を付さなければ低い証明力しか認められません。電子署名法上有効な「電子署名」を施せる電子署名サービスを選んで安全に取引をするのが望ましいといえるでしょう。
ただし民法によると契約方法は自由なので、電子署名法3条を満たさない方法によって締結された電子契約であっても法的には有効です。電子データの真正な成立を争う裁判になった際に、電子署名法3条に準拠したサービスであれば、その立証プロセスが簡略化できるという意味にとどまります。
つまり3条に準拠せずとも、契約に至る状況証拠の積み重ねによって真正な成立の立証は可能なので、どうしても3条に規定する要件にこだわる必要はないとも考えられます。
いずれにせよ、利用する電子署名サービスの証拠力は確認しておく必要があるといえるでしょう。
先にも述べた通り、契約締結権限の確認は非常に重要です。権限のない人が電子署名しても無効です。電子契約サービスを導入する際には契約締結権限を確認する機能がついているかどうかを確認すべきといえます。
AgreeLedgerはブロックチェーン技術を応用した電子署名サービスを提供しており、電子署名法の要求する本人性や非改ざん性も担保できるシステムです。契約締結権限の確認が可能なので、契約の有効性が担保される可能性が極めて高くなっています。安全で優良な電子契約サービスを導入したい場合、ぜひご検討ください。